強くて軽い、キャスター
半導体製造装置や自動車工場で部品の搬送ワゴンを支えるキャスター。多くの工場で使用されているキャスターを製造する内村製作所は日本の経済を支える縁の下の力持ちといっても過言 ではない。
今回、表彰対象となった内村製作所の超重量用自在型キャスター№109X-Nと固定型№609X-Nは、直径150mmの車輪で許容荷重が800kgという強くて軽いキャスターだ。他社の同サイズ製品の2~3倍の重量にも耐えられる上に、始動性や旋回性は同サイズ製品並みという優れものである。また各パーツへの分解を考慮した新構造で、材料を工夫し、環境にも配慮したリサイクル可能なものを採用した。本体部分は軽量の「アルミ合金ダイキャスト」、座金は強度がある「ハイテンション鋼」を使った。同社のキャスターを組み込むことにより、重量物の移動、運搬を省力化することができる。
内村製作所とキャスターの出会い
従来より、500kgを積載できるキャスターは存在していたが、重い、旋回しない等、操作性が著しく劣っているか、あるいは、操作性が良くてもキャスターの寸法が大きくなってしまうというのが現状であった。そのような中、内村製作所では、他社製品や従来品よりも軽量で強固なキャスターを製造している。現時点では、このような高性能なキャスターを製造できる技術は他にはないという。「日本には資源がないから、技術力で勝負しないとね。」そう話すのは社長の内村國啓さん。この会社にはここにしかない技術があるのだ。
同社と、キャスターの出会いは、創業者である現社長の父、内村林さんの時代までさかのぼる。当時、プレス加工業を営んでいた林さんは電気部品から自転車部品、アルコールライターまで色々なプレス部品を製作していた。腕のいい彼のところには、プレス加工の依頼が絶えなかったという。ある日、米国製キャスターを持った知人が「このキャスターと同じものをなんとか作ってもらえないだろうか。」という依頼を持ち込んだ。当時、キャスターは米国や欧州製のものが主流で、日本のキャスターは台車について回ればいいものとして、そのスタイルも確立されていなかった。
下請けから脱却し、自分の手で製品を生み出したいと考えていた林さんにとっては絶好のチャンスであった。そしてこれが内村製作所とキャスターの出会いであった。「ただ外国のものを真似たものではおもしろくない。コピーではないオリジナルのものをつくろう。」そう決意し、キャスターの研究に没頭し、プレス加工の技術と経験を集約したオリジナルのキャスターを完成させた。 これがオリジナルブランド「パッキングキャスター」であり、今日の内村製作所の礎となった。旋回部の隙間をフェルトでカバーしており、ゴミや水分の混入を防ぐほか、ボールが回転しやすいように注入するグリスをフェルトが適度に吸収するため、長期間の安定した動きに貢献している。「4年周期で新しいものを作るようにしている。」そう語る現社長の内村國啓さんにも、父である林さんの進取の気性が受け継がれている。
「最高の品質こそ、最高のサービス」
この言葉が内村製作所のモットーである。同社の強みはこの言葉に表れているといっても過言でない。
同社のキャスターは当初ホテルなどの食事運搬用の台車に使われていたが、現在では半導体製造装置、精密機器、工作機械向けが売上のほとんどを占める。そのため地震や段差による衝撃を受けても必ず上のものを守るために耐久性にとことんこだわっているという。例えば上皿、下皿、本体に焼き入れを施し、表面を硬化するなど素材そのものの強度も向上させている。こういった高品質な製品を通じて、最高のサービスを提供しているのだ。
このように一つ一つの工程に手間をかけているだけに、コストもかかり、一般的なキャスターと比較して価格も高い。形だけをまねた安価な類似品が出回って、苦労したこともあったそうだが、「そういうものはすぐ壊れてしまうから、何年かするとうちのキャスターに戻ってきてくれるんだ。」と、内村國啓さんは自信をもって話す。品質を最優先して製造しているからこそ、内村製作所のキャスターは多くのユーザーの支持を受けているのだ
早稲田大学商学部4年 小島ちえ (こじま ちえ) 著
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