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       トップページ > 「北区未来を拓くものづくり表彰」



 東京都北区は平成21年1月19日「北区未来を拓くものづくり表彰」の表彰式を早稲田大学総合学術情報センター内国際会議場井深大記念ホールで行いました。表彰は北区内の優れた製品や人材、企業が対象で平成17年から早稲田大学との連携事業として進めています。
 ㈱内村製作所は「新製品・新技術部門」、「地域協働・地域貢献部門」の2部門にて表彰されました。
以下は「北区未来を拓くものづくり表彰」の冊子から弊社の記事を抜粋したものです。


北区の表彰式詳細ホームページはこちら


「新製品・新技術部門」

強くて軽い、キャスター

 半導体製造装置や自動車工場で部品の搬送ワゴンを支えるキャスター。多くの工場で使用されているキャスターを製造する内村製作所は日本の経済を支える縁の下の力持ちといっても過言ではない。
  今回、表彰対象となった内村製作所の超重量用自在型キャスター№109X-Nと固定型№609X-Nは、直径150mmの車輪で許容荷重が800kgという強くて軽いキャスターだ。他社の同サイズ製品の2~3倍の重量にも耐えられる上に、始動性や旋回性は同サイズ製品並みという優れものである。また各パーツへの分解を考慮した新構造で、材料を工夫し、環境にも配慮したリサイクル可能なものを採用した。本体部分は軽量の「アルミ合金ダイキャスト」、座金は強度がある「ハイテンション鋼」を使った。同社のキャスターを組み込むことにより、重量物の移動、運搬を省力化することができる。





内村製作所とキャスターの出会い

 従来より、500kgを積載できるキャスターは存在していたが、重い、旋回しない等、操作性が著しく劣っているか、あるいは、操作性が良くてもキャスターの寸法が大きくなってしまうというのが現状であった。そのような中、内村製作所では、他社製品や従来品よりも軽量で強固なキャスターを製造している。現時点では、このような高性能なキャスターを製造できる技術は他にはないという。「日本には資源がないから、技術力で勝負しないとね。」そう話すのは社長の内村國啓さん。この会社にはここにしかない技術があるのだ。
 同社と、キャスターの出会いは、創業者である現社長の父、内村林さんの時代までさかのぼる。当時、プレス加工業を営んでいた林さんは電気部品から自転車部品、アルコールライターまで色々なプレス部品を製作していた。腕のいい彼のところには、プレス加工の依頼が絶えなかったという。ある日、米国製キャスターを持った知人が「このキャスターと同じものをなんとか作ってもらえないだろうか。」という依頼を持ち込んだ。当時、キャスターは米国や欧州製のものが主流で、日本のキャスターは台車について回ればいいものとして、そのスタイルも確立されていなかった。
 下請けから脱却し、自分の手で製品を生み出したいと考えていた林さんにとっては絶好のチャンスであった。そしてこれが内村製作所とキャスターの出会いであった。「ただ外国のものを真似たものではおもしろくない。コピーではないオリジナルのものをつくろう。」そう決意し、キャスターの研究に没頭し、プレス加工の技術と経験を集約したオリジナルのキャスターを完成させた。これがオリジナルブランド「パッキングキャスター」であり、今日の内村製作所の礎となった。旋回部の隙間をフェルトでカバーしており、ゴミや水分の混入を防ぐほか、ボールが回転しやすいように注入するグリスをフェルトが適度に吸収するため、長期間の安定した動きに貢献している。「4年周期で新しいものを作るようにしている。」そう語る現社長の内村國啓さんにも、父である林さんの進取の気性が受け継がれている。



「最高の品質こそ、最高のサービス」

 この言葉が内村製作所のモットーである。同社の強みはこの言葉に表れているといっても過言でない。
 同社のキャスターは当初ホテルなどの食事運搬用の台車に使われていたが、現在では半導体製造装置、精密機器、工作機械向けが売上のほとんどを占める。そのため地震や段差による衝撃を受けても必ず上のものを守るために耐久性にとことんこだわっているという。例えば上皿、下皿、本体に焼き入れを施し、表面を硬化するなど素材そのものの強度も向上させている。こういった高品質な製品を通じて、最高のサービスを提供しているのだ。
 このように一つ一つの工程に手間をかけているだけに、コストもかかり、一般的なキャスターと比較して価格も高い。形だけをまねた安価な類似品が出回って、苦労したこともあったそうだが、「そういうものはすぐ壊れてしまうから、何年かするとうちのキャスターに戻ってきてくれるんだ。」と、内村國啓さんは自信をもって話す。品質を最優先して製造しているからこそ、内村製作所のキャスターは多くのユーザーの支持を受けているのだ


                        早稲田大学商学部4年 小島ちえ (こじま ちえ) 著






「地域協働・地域貢献部門表彰」



車椅子の性能はキャスターから

 「障がいを抱えるのは確かに不便ではあるけれど、それでも一歩一歩、くじけずに生きていくことが大切なんですよ。」内村製作所の社長、内村國啓さんが語るその言葉は、簡潔にして重みのあるものだった。それは、内村さん自身が中学生の頃、怪我がもとで2年ほど寝たきり生活を余儀なくされた経験から来た、身体障がい者の方々への決して表面的な慰めではないエールであろうと私には感じ取れた。
 内村製作所は、運搬機器は無論、医療機器や、産業機械等、様々な機械装置の足回りとして欠かせないキャスターを製造・販売している一方で、身体障がい者向け車椅子用のキャスターも扱っている。車椅子用キャスターは、日常生活で用いるものでも操作性や騒音の低さ等々、様々な性能が求められるのだが、それに加えて、車椅子バスケットボールに代表される身体障がい者スポーツに使われる車椅子用キャスターともなると、それ以外にも旋回性能や耐久性等、スポーツ用独特の性能を持ち、しかも高い品質のものが必要である。同社は、高性能・高品質の車椅子用キャスターを開発し、そして身体障がい者車椅子バスケットボール競技の創設と運営にも多大な貢献を果たしている。内閣総理大臣杯争奪日本車椅子バスケットボール選手権大会において、「パッキングキャスター杯」を第1回から本年の第37回にわたり贈呈している。



諸外国に学び、諸外国を牽引するキャスターを開発

 内村さんに身体障がい者向け車椅子用キャスターを開発する決意をさせた契機は、同社がキャスターを作り始めてから10年後、1964年のことであった。
 その年、アジア初のオリンピックが東京で開催され、続いて身体障がい者スポーツの祭典である東京パラリンピックが行われることになった。そこで、内村さんは日本と諸外国との決定的な差を知ることになる。「日本は当時まだ台車用のキャスターを車椅子に流用しているに過ぎず、外国製の車椅子用キャスターとの性能の違いは歴然としていた。」と、内村さんが話すように、一漕ぎで軽々と前に進み、旋回性能も優れていた外国製の車椅子に比べ、日本の車椅子は、スポーツはおろか日常生活においてもまだまだ未熟な面の多いものであった。
 内村さんは中学生の頃、せき髄の打撲がもとで寝たきり生活を二年もの間続けていたことがある。その経験がなければ、今日の車椅子用キャスターはまた異なったものになっていたに違いないだろう。東京パラリンピック後、内村さんはまもなく今までのキャスターの製造で培った知識と技術を基に、車椅子用キャスターの開発に着手することになる。身体障がい者の方々からの要請があったとはいえ、車椅子の現状を目のあたりにしてすぐに行動に移したのは、内村さん自身が障がいを持つことの不自由さ、苦しさを体感していたからに他ならないだろう。「形だけ整えても駄目。」内村さんは、ただ既存の外国製品を模倣するのではなく、内村製作所ならではの独自な車椅子用キャスターを生み出さなければと考えていた。そこで、内村さんはおよそ10年をかけて全国の障がい者施設を巡り、研究を重ね、ついに外国製に勝るとも劣らない車椅子用キャスターの開発に成功した。他の追随を許さない性能を持つその製品も、やはり頭で計算しただけでは完成せず、実際に現地で身をもって学んだ結果だということであった。まずは目で見て、耳で聞いて、手で触れて学べ。これまでの技術者・技能者の方々へのインタビューから私が学んだことを、内村さんのお話を伺いながら改めて確信した。
同社のキャスターは、身体障がい者車椅子バスケットボールの発展に貢献したばかりではなく、より操作しやすく機能性に富んだ車椅子の登場にも貢献したのではないか。



キャスターが未来を変える

 「自分を愛し、他人を愛すこと。そのために、常に観察眼を持つようにすること。」内村さんは強い方であると感じた。自分の怪我にも決して負けず、他人の障がいにも決して目を背けずにそれを乗り越える。そして、何事もなかったかのように周りに笑顔を振りまき、周りを笑顔にする。
 現在、スポーツ用車椅子キャスターについて、メーカーの内製化により内村製作所はこの分野から撤退しているが、医療用・在宅身体障がい者用キャスターについては、現在もなお採算を度外視した上で生産を続けているただ、「物事は変わり続ける、そしてその中にはいずれ元に戻っていくものもある」と内村さんが言うとおり、近い将来、再び同社のキャスターが障がい者スポーツに革命をもたらすこともあるかもしれない。障がい者の方々の幸せを願い、飽くなき探究心を持つ内村さんならば、それがきっと可能であるように思うし、私はぜひともそうなってほしいと考える。



                       早稲田大学商学部4年 菊地拓也 (きくち たくや) 著